「ぼく、ドラえもん」の声でおなじみの大山のぶ代さん。 直腸がんの手術をしてから、昨年の春で5年がたち、 今年70歳を迎えられます。
人間ドックで直腸がんが見つかり、 一人になると、不安になって涙がこぼれたといいます。
そんな時に助言をしてくれたのが、ドラえもん。
大山さんの「がん」と向き合ったお話をご紹介いたします。 |
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< 直腸がん(1) 夫のお陰でがん発見 > (2007年10月8日 読売新聞)
2001年春、人間ドックで直腸にがんが見つかった。人間ドックは結婚3年目から、夫(タレントの砂川啓介さん)と二人で受けてきた。
「当時は、人間ドックという言葉もなかったような気がします。でも、『病院は病気になって行くところでなく、これからは予防が大事』と年1回、受けることにしました。60歳を過ぎてから、年2回にしました」
今年で結婚44年目なので、もう40年以上にわたる恒例行事だ。医学の進歩で、新しい検査も次々に登場した。大腸内視鏡もその一つ。大腸のポリープやがんを発見できると聞いたが、しばらく避けていた。
「お尻から器具を入れることや、水や下剤を飲む準備に抵抗があって。でも、夫から『来年は受けなさい』と言われて、ようやく受けたんです」
すると、直腸に「気になるもの」があるという。内視鏡で組織の一部をとった。翌日、「悪性でした」と連絡があった。
高校2年生の時に亡くした母を思った。子宮がんで、42歳の若さだった。以来、「いつか私もがんになる」と思っていた。
「でも私は60歳を超えられた。20年もおまけしてもらい、ありがたい。そう思いましたね」
< 直腸がん(2) ドラえもんに聞いた > (2007年10月15日 読売新聞)
2001年春、直腸にがんが見つかり、手術を受けることになった。周囲に心配はかけまいと明るく振る舞っていたが、一人になると涙がこぼれた。
「麻酔から目覚めるかしら、などと不安になってしまって」
思い悩む時、いつも適切な助言をしてくれるのは、1979年からアニメで声を演じてきたドラえもんだった。
「自問自答っていいますけど、私の場合は、自然と『ねえ、あなただったらどうする』って聞くんですよ。この時もドラえもんは、『切れば』とささやいてくれました」
ドラえもんは2112年の生まれ。
「私たちが知らない未来のことも知っているあの子が言うなら間違いない。悪いところは切ってしまおうと決心しました」
ドラえもんのぬいぐるみやクッションを持って入院した。
早期だったので、おなかに開けた3か所の穴から、切除器具やカメラを入れて行う腹腔(ふくくう)鏡手術を受けた。
「傷もほとんど目立たず、今ではもう、わかりません。痛みもありませんでした。退院後はすぐ、子供のためのイベントでマイクを持ち、歌って踊りました」
< 直腸がん(3) 「引き際」を模索 > (2007年10月22日 読売新聞)
がんの手術で入院していることは夫と事務所しか知らなかった。ドラえもんの録音も、ほかのキャストが収録したフィルムがたまった段階で、病院からスタジオに駆けつけて行った。
でも、ひそかに思い詰めていたことがあった。早期とはいえ、「がん」は重い現実だった。
「私にもしもの事があれば、大切なドラえもんに傷がついてしまう。今が引き際かな、と決意しました」
3人の関係者に病室に来てもらって、相談しようとした。「でもね。みんな面白おかしいことを話してね。切り出せなかったの」
3人は事前にその思いを察し、打ち合わせていたと後に知った。心遣いに涙があふれた。
直腸の手術後、腸が癒着したり、硬くなったりしやすくなり、腸閉塞(へいそく)になる人も少なくない。以前は肉類をよく食べていたが、野菜や穀類、果物中心の食卓になった。
「病気をしたからというより、年をとって自然と嗜好(しこう)が変わったのでしょう」
入院中の心配は杞憂(きゆう)だった。2005年春、26年間共演してきたのび太くん役、しずかちゃん役ら4人とそろってドラえもんを「卒業」した。
< 直腸がん(4)何事も前向きに > (2007年10月29日 読売新聞)
がんの手術後5年が治癒の目安とされる。昨年春、その5年を迎えた。
「安心はしましたよ。でも今でも、お店の張り紙で『移転しました』とあれば、『転移しました』と読み違えてしまう。意識はしていませんが、頭の隅からがんが消えないんですよね」
主治医からは、「(明るい性格の)大山さんなら大丈夫です」と言われ続けている。
「すべていい方に考えるんです。病気にとらわれず、前向きに生きれば病気は逃げていくんじゃないかしら」
ドラえもんを卒業した今も、テレビやラジオで精力的に仕事を続ける。今年、専門学校の校長に就任、声優やアナウンサーなどを目指す若者に教える。
「元気に好きな仕事ができるのも、早期発見できたから。人間ドックで健康管理をしていてよかったなあと思います」
「女性は自分のことを後回しにしがちだし、男性も定年を迎えたらもう健診は受けない、とよく聞きます。でも、定期的に体をチェックして、悪いところは早く発見して治す、という習慣は大切ですよ」 (文・中島久美子、写真・三輪洋子)
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