|
病気の正しい理解が先決
誤解を招く医療用語は、わかりやすい言い換えを検討すべきではないか――という前回(2月9日)の問題提起に対して、様々な意見をいただいた。
科学的に効果と副作用が証明された、その時点で最も成績の良い治療法なのに、語感から〈並の治療〉と捉(とら)える人が多い「標準治療」という言葉について、東京都の山下みどりさん(50)は、「私も『最新治療』の方がいいと誤解していた」。「最新」と呼ばれる治療法は、研究中で効果や安全性が証明されていないことが多いため、「『実験治療』と言い換えたらどうか。それが無理なら、マスコミで取り上げる時に必ず説明をつけてほしい」と提案する。
一方、茨城県に住む図書館司書の阿部宗徳さん(25)は、「『標準』の意味は『手本、模範』。『姑息(こそく)』は『一時しのぎ』であり、ずるい・卑怯(ひきょう)の意味はない」と解説し、「標準治療も姑息的治療も本来の意味を考えれば分かることで、語感が悪いというのは勘違い。医師がきちんと説明すればいいことではないか」と言う。
これに対して、母親が乳がん闘病中のさいたま市の主婦(43)は、「患者・家族には、言葉から受ける印象が直接、気持ちや体調に響く。言葉の意味を理解しなさいと負荷を与えるより、普通の言葉に言い換える方が優しい対応ではないでしょうか」と指摘。脳腫瘍(しゅよう)を経験した30歳代の会社員も、「大抵の人は、自分が病気になったことを受け止めるだけで精いっぱい。少しでも患者の負担や誤解をなくすため、理解しやすい言葉を使ってほしい」と注文する。
また、「『白血病』や『がん』には『死』のイメージが強く、聞いただけで動揺する」「死を連想させる『がん』という病名は、変えられないだろうか」という意見もあった。これについて、国立がんセンターがん対策情報センターの的場元弘医師は、「否定的なイメージで、患者の治療にマイナスになる言葉は変えるべきだ。だが、『がん』を言い換えても、治療やケアのあり方を前進させなければ、新しい病名にも同じイメージがついて回る」と指摘する。
その通りだと思う。治療の選択肢を増やしたり、患者が情報を入手しやすくしたりすること。そして、患者でありながらも元気に活躍している人の姿を知ってもらうことなどを通じて、「がん」という病気への正しい理解を広めていくことが、言葉の言い換え以上に重要だ。
本田 麻由美記者 (2007年2月23日 読売新聞)
|