東京都の主婦B子さん(58)は2003年9月、夕食後、胃のあたりに
変なむかつきを覚えた。
翌日は休日で、救急外来にかかると、「便秘ではないですか」と医師。
だが、出された薬を飲んでも、腹部の嫌な感じは消えない。
「こんな気持ち悪さは初めて。絶対どこか悪い」と思い、翌日改めて
内科を受診した。腹部の超音波検査をした医師は、「あっ」と声を上げた。
腹部の中央に、巨大な腫瘍(しゅよう)ができていた。
これが胃を圧迫して、むかつきの原因になっていた。
そのまま入院し、本格的な検査を受けた。
腫瘍は直径16センチに達していた。おなかに針を刺し、
組織を取って調べたところ、どこか別の部位にできたがんが
転移したものらしかった。肝臓にも小さな転移が見つかった。
だが、血液検査や胃、大腸の内視鏡、子宮や卵巣検査など、
1か月以上調べても、元になったがん(原発がん)は見つからない。
医師は「血液のがんかもしれないが、よく分からない」と首をひねった。
セカンドオピニオン(別の医師の意見)を取るため、12月に
国立がんセンター中央病院(東京・築地)を受診した。
やはり、元々どこにできたがんかは分からない。
「原発不明がんとして治療しましょう」。ようやく方針が決まった。
同病院乳腺・腫瘍内科の安藤正志(まさし)さんによると、
原発は不明とは言っても、顕微鏡で調べた組織のタイプでみると、
いくつかの種類がある。
約60%は「腺がん」という種類が占め、膵臓(すいぞう)や肺、胃、
大腸などに発症し、肝臓や肺、骨、リンパ節に転移することが多い。
残りの約35%は「未分化がん」、約5%が「扁平(へんぺい)上皮がん」
と呼ばれるがんだ。
安藤さんは「原発不明がんの診断では特に、これらの組織検査を行う
病理医との連携が大切」と指摘する。
ただ、転移組織だけから、元はどこに発症したがんかを
特定するのは難しい。このため、女性なら乳がんや卵巣など
婦人科のがん、中高年男性で骨転移なら前立腺がんというように、
年齢や症状から、ある程度絞り込み、一通り調べる。
それでも診断できなければ「原発不明」と判断し、治療に移る。
「遅くとも1か月以内には治療を始めたい」と安藤さんは話す。
B子さんは卵巣など婦人科のがんや消化器のがんなどでは
ないと分かり、病理検査では未分化がんだった。
原発がんは分からないものの、未分化がんには、抗がん剤が
比較的効きやすい。抗がん剤治療に期待をかけることになった。
原発不明がんでよく見られる症状
・リンパ節の腫れ(首、わきの下、太ももの付け根など)
・胸水や腹水による胸痛、息苦しさ、腹部の張り
・エックス線検査などで見つかる肺、肝臓への転移
・骨転移による痛み、骨折
(2007年1月24日 読売新聞)