病巣縮小、乳房温存率アップ
乳がんの発症者は年々増え続け、
年間約4万人とされる。
死亡者も増えている。
ただし、早期に見つけて治療が
できれば、10年生存率は
8〜9割と完治が見込める。 |
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乳房を残す温存手術。
術前化学療法の導入もあり
増えている(都立駒込病院で) |
治療では、手術による切除の範囲を狭め、薬物治療が重視される
ようになっているのが最近の傾向だ。
読売新聞は今年8月、乳がん治療の主要543施設に、
昨年の治療内容をアンケートし、431施設(回収率79%)から回答を得た。
紙面の制約上、2005年の手術件数が70件以上
(該当施設がない場合は、県内最多)の215施設を一覧にした。
かつては、再発を防ぐために、がんの広がりが予想される範囲を
広く切除する必要があると考えられ、乳房を全摘するのが主流だった。
80年代後半から、がんとその周囲のみを切除し、手術後に放射線を
照射すれば、全摘と生存率に差がないとのデータが出始め、乳房を
温存する手術が普及してきた。
温存か全摘かは、がんの大きさや広がり具合、乳房とがんの大きさの
バランスと、患者の希望から総合的に判断する。
厚生労働省研究班の指針では、がんの大きさが3センチ以下、
切除しても良好な外観が得られるなら
4センチまでとしているが、現実には各施設で違う。
今回の調査での平均温存率は60%だが、施設間でばらついた。
温存しても、変形が著しい場合もあり、温存か全摘か、自分のがんの
状態を基に、複数の施設で意見を求めて決めたい。
乳がんの再発を抑えるため、手術後に抗がん剤などの化学療法が
行われてきたが、ここ1、2年、手術の前に時期が移りつつある。
手術前でも後でも治療効果に差はなく、手術前の実施にむしろ
利点が多いためだ。
がんが縮小するため、手術範囲が狭まり温存が可能になるなど、
乳房を残せるケースが増えるのがひとつ。
もう一つは、がんの大きさの変化が観察できるので、抗がん剤の
効き目がはっきりする点だ。
都立駒込病院外科部長の戸井雅和さんは、「手術後の化学療法は目に
見えないがんが対象なので、効いているかどうか判断できない。
手術前なら縮小の程度によって治療後の経過が推測できる」と説明する。
手術前の化学療法は、施設により、抗がん剤治療が必要と判断した
患者全員を対象にするところと、温存を望む患者などに限る施設もある。
各施設の方針を一覧で示した。
また、全摘で失った乳房を取り戻すには、背中や腹部の組織や
人工物を移植する乳房再建術がある。がんの手術と同時に行う場合と、
時期をずらして行う場合がある。同時再建は、手術が一度ですむので、
入院日数や費用を抑えることができ、乳房を失った喪失感を
経験しないですむ。
ただし、がんと診断された直後で再建まで考える余裕がないことも多く、
再発の危険度も考慮に入れて判断する必要がある。
再建は形成外科医の担当で、同時か手術後か、長所と短所を聞き、
手がけた手術の写真を見せてもらった上で決断したい。
一覧では同時再建手術の件数を示した。
求められる総合力
手術範囲縮小の流れには、転移の道筋になるわきのリンパ節の
組織を手術中に病理医が調べる「センチネルリンパ節生検」の普及も
役だっている。
こうした検査や化学療法の工夫、乳房再建手術など、
乳がん治療は外科医だけではなく、病院の総合力が支える。
スタッフや設備が不十分で、旧態依然の治療を漫然と続ける
施設もある。この点を十分意識して、病院を選んでほしい。
(中島久美子)
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