大橋巨泉さん 自身のサイトで見つけた、
巨泉さんの胃がんについての考え方がありました。面白かったのでご紹介させていただきます。
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胃がんに罹って、いちばん身に染みたキーワードがあります。
それは「個人差があること」です。
食事やトイレ、リハビリといった手術後の生活の方法すべてに、患者個々人の回復のスピードに合わせた差があるのです。個人差があることを認めた上で、自分にいちばん合ったやり方を見つけていく必要がある。
今年6月ボクは胃がんを宣告され、手術をして胃を半分切り取りました。巷にがんについて書かれた本は無数にありますが、“普通のがんの本”には、個人的な作業の実態が書かれていません。
がんの手術を受けた人は、
「人より食事量が増えていないんじゃないか」
「リハビリのための散歩に出ても、すぐに疲れてしまう」
と、生活するうえで、自分の体が人と比べて順調に
回復しているかと心配が絶えない。
たとえば、ボクが読んだがんの本には、「健常なときの8割食べられるようになるのに半年はかかる」と書かれていました。
ボクの場合、いま術後4ヵ月が経過しましたが、手術前を10として、術後約2週間で退院したときが『1.5』、1ヵ月経つと『3』、2ヵ月経ったときには『5』、そしていま『8』ぐらい食べられるようになりました。回復のスピードには個人差があるんです。
ボクは今回の闘病の経験を、単行本に書き下ろしました。がん患者にとって、それぞれの個人差を把握するため、日常の食事から排便、運動まで、すべて試行錯誤の連続です。
ここに書いたことは大橋巨泉が体験したがんとのつき合い方でしかありませんが、71歳(出版当時)のボクのケースも、ひとつの指針として役立ててもらいたいのです。
本誌(当時の週刊現代)で人気コラム「内遊外歓」を連載中の大橋巨泉氏が10月25日、『がん─大橋巨泉の場合』(講談社刊、税込み価格1575円)を上梓した。
37年間、人間ドックに通い続けている巨泉氏は、平均的な日本人より健康に対する意識が高いと言えよう。その巨泉氏が、胃を切って初めて知ったがんの知識、食事制限の厳しさ、排便時の悩みなどをあますところなく書き下ろした。
巨泉氏は、本の中で明らかにした闘病の実態を紹介しながら、がんに罹った際に気になる生活のあれこれについて語った。
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◆「がん=死」ではない
国立がんセンターの医師はボクに
「リッパながんです」
と告知しました。もはやがんを隠す時代ではないんです。
告知に対して冷静に対処するのが、何より大事です。がんと聞いて何も考えられなくなってしまうほどショックを受けては、治療に差し障りが出るからです。優秀な医師がインフォームド・コンセント(病状、治療について説明し、患者の同意を得ること)を徹底しても、患者が判断力を鈍らせては意味がありません。
ちなみに早期発見の胃がんの5年後生存率は98%、しかも残りの2%の中にはがん以外の死因も含まれるそうです。
◆第二、第三、第四のオピニオンを聞け
ボクは人間ドックに通っていたから、がんを早期に見つけることができました。早期に見つけることができれば命を落とさずに済む。ヘンな言い方ですが、ボクは「税金」を支払う感覚で、毎年人間ドックにかかっています。
体に異常を感じて医者にかかった際、一人の医者の診断だけを盲信するのは危険です。セカンド・オピニオン(他の医師の診断)、時には第三、第四の意見を求めるべきです。その際、町のお医者さんをうまく活用すべきです。
専門医である大病院の医者は、病名が特定されてからは力を発揮します。しかし、患者の体の異常に気付き、病名を特定する“仕分け”の作業は、あなたの近所にもいる町のお医者さんのほうが得意な場合が多いそうです。
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◆食べられる量の変化
いまボクの胃の長さは9cmしかないそうです。普通の人の胃は18cmだそうで、ちょうど半分。胃を半分切った人も、全部摘出した人も、手術の後から食べる量を調節すること、そして食べ方に苦労することになります。
手術が終わって5日目に初めての食事を摂りましたが、内容には驚きましたね。50CCずつカップに入ったコンソメ・スープとジュースを半分残さなくてはいけなかったからです。しかも、少しずつよく噛んで食べることを徹底させられました。
ボクは胃の真ん中の部分を切り取って、上の部分と下の部分を繋ぎ合わせる手術をしました。繋ぎ合わせられた胃は手術からしばらくの間、怠けてしまう。つまり胃に食べ物が入ってきても、消化して腸に送り込まないんです。だから食べた分だけ、胃に食べ物が貯まっていってしまう。
健康な胃なら食べ物が腸に届くのに4〜5時間だそうですが、手術直後のボクの胃は24時間かかりました。回復した後も、食べ過ぎて発熱したこともあります。それを繰り返して、一日に食べる分量を自分で見出していきました。
いまボクは一日五食です。午前7時半頃に朝食、10時にオヤツ、お昼を食べて、午後3時頃にオヤツ、そして夕食です。いっぱい食べられるようになったわけじゃなくて、一回の分量を少しにして回数を分けたんです。
胃を切ると体重の1割は減るそうで、ボクも減りました。いまはやや体重を戻しつつあります。胃を切る前、コレステロールも中性脂肪も高くて、ここ2年ぐらいは血糖値も上がってきて、病院から「リッパな糖尿病予備軍」というレッテルを貼られていたんですが、数値は正常に戻りました。まさに「禍転じて福」ですね。
◆手術後の食習慣
医者からは「回復すれば、食べていけないものは基本的にない」と言われました。驚いたことに、退院後に執刀医の先生が、「鰻(うなぎ)なんていいじゃないですか。白焼きに一寸ワサビをつけて、白ワインでなんてうまいでしょうね」
と言ったほどです。
ただし、「少量を、よく噛んで、ゆっくり」を心がけなくてはなりません。胃を切る前、健康な頃のボクは早食いでした。寿司やそばを食べるのに、噛んで食べるのは野暮だと教わってきたからです。それがいまは、口に入れたものを40回は噛んでいる。
胃を切った人はテレビを観ながら、本を読みながらご飯を食べてください。ひと口食べては箸を置き、テレビに集中してよく噛む癖がつきます。命にかかわる問題だからマナー違反も大目に見てもらいましょう。
ただし、人としゃべりながらはダメです。自分も話そうとして、噛まずに飲み込んだりしますから。
◆噛んでなくなるものと、なくならないもの
「どんな固そうなものでも、噛んだものが小さくなってゆくものは食べても大丈夫です。噛んでも噛んでも同じ大きさのものは、口から出してください」
医師からこう言われました。イカとか貝類は、実は小さくなりません。白身の魚の刺身もそうです。赤身のマグロは小さくなりますが、トロは最後に筋が残ります。
果物ではパイナップルや梨、桃などは繊維が残る。噛んでなくなるのは、リンゴやバナナです。グレープフルーツやミカンのような柑橘類は、内側の袋や筋を取り除いて食べなくちゃいけない。
ボクはにんじん、セロリ、オレンジ、リンゴをジューサーにかけて、特製の「巨泉ジュース」で繊維を摂るようにしています。
豆には用心してください。ボクは小豆やあんこが大好きですが、実は小豆には皮がついているんです。皮は噛んでもなくならない。ボクは豆が原因でひどい下痢を起こしました。
ボクは食べ物を腸に送る出口にあたる幽門を取っていませんが、幽門を取った人は豆の皮や果物の繊維を完全に消化しないまま腸に送り込むことになります。それが原因で腸閉塞や腸捻転を起こすケースがあるそうです。
ボクの胃だって、真ん中を切り取って上下を縫いつけてあるわけです。糸は1年も経てば溶けてしまいますが、溶ける前に糸に食べ物が絡みついたらどうなるでしょう。
◆アルコールは飲んでいい
お酒を飲まなかったのは、手術前日から2週間ぐらいですよ。退院したら、すぐに飲みました。ただし、酒に弱くなりましたね。手術前はけっこう強くて、ワインは1本以上飲まなければ酔った状態になりませんでしたが、いまは2杯ぐらいで酔っぱらいます。酒量は減りました。
◆ボクは手術翌日から歩き始めた
ボクは東京・築地の国立がんセンター中央病院に入院しましたが、手術の翌日から歩かされました。昔は手術後は「絶対安静」だったのでしょうが、「早期離床」に変わっているようです。
手術翌日、病室からナース・ステーションまで20mを歩きました。それだけで寒気がして、すぐにベッドに戻りました。2日目には150m歩けました。徐々に歩く距離を増やせば良い。
早くからリハビリをするのには、理由があります。手術の傷の痛みの原因は神経だけでなく筋肉や血行も関係しており、手術では筋肉も血管も切る。そのため早くから運動をして血行や筋肉の収縮力を回復させるのです。
ここでリハビリを怠ると、退院しても筋肉が萎縮した状態が続き、痛みが長引くようです。
ただし無理は禁物。医者から何度も言われたのは、無理をしない、痛みを我慢しないことです。見栄を張って歯を食いしばって運動しても、百害あって一利無しです。
◆退院後のリハビリ方法は?
国立がんセンターの笹子三津留先生が勧めるのは、スイミングや水中ウォークです。泳がなくてもいいから歩くんです。プールが近くにない人もいるでしょう。ボクが発明したリハビリ方法をお教えします。
題して「マーケット・ウォーク」です。
妻の買い物に付き合って大型の100円ショップに行ったときに「ここはリハビリに向いている」と思いました。夏場でしたが冷房が効いていて、快適に歩ける。
しかも商品が並んでいるから、ただ道を歩くのと違って飽きることがない。何しろ利用料は取られません。デパートでもスーパーでも結構です。
大型の広い施設を探して、冷暖房の効いた環境でリハビリをしてみてはいかがでしょう。 ただし、人の多いところは避けるべきです。子供が駆けてきてぶつかられたりでもしたら、大変です。
◆体力が落ちても大丈夫
ボクにとって、手術後、ゴルフをいつ始めるかは重大な問題でした。2ヵ月目にクラブを握り、それから10日ばかりしてコースに出ました。最初は体力がなく6番ホールでリタイアしましたが、もちろん大事を取るためです。
でも、体力の落ちた体に、とっておきの“特効薬”を見つけました。固形ブドウ糖です。これをひとつ口の中に放り込めば、点滴を打っているのと同じ効果があるわけだから元気が出ますよ。
いまだに最大の悩みは便秘です。ボクは下痢をしても便秘はしたことがない人間だったんです。胃がんになって初めて、便秘の苦しみを知りました。
肛門の近く、直腸の最後のところにゴルフボール大の異物感があるのに、いつまでも便が出ない状況が続くんです。医師はボクに、「2日以上、便を溜めないでください。出なかったら下剤を使ってでも出してください」と繰り返し言いました。
術後最初の1ヵ月は1〜2食抜いて、水分だけ摂るようにするなどしていました。いまは便通がない場合、緩下剤を服用して寝ますが、それでも翌日に出ないことがあります。
そこで考えたのが、ウォシュレットなど洗浄器付きの便座を利用することです。水流の強さを変えたり、水を当てる場所を変えたりして、それこそ読書をしながら気長に刺激するんです。
◆がんへの偏見をなくす
ボクは母を子宮がんで亡くしました。亡くなったのは1954(昭和29)年のことです。母はその数年前、医者からこう言われました。
「子宮筋腫です。けれど、このぐらいの筋腫でしたら、閉経したらなくなります」
こう言われた母は、「もうじき閉経だから」とメスを入れることなく、病巣を放置しました。それから6〜7年経って、体調が悪くなって病院に行ったら、筋腫は悪性の肉腫になっていました。
いまの時代に母が生きていたら、子宮筋腫だと言われた時点で早期に治療して、絶対に助けることができたでしょう。ボクが人間ドックに通い続けているのは、亡き母の体験を無駄にしないためにも病気の早期発見に努めたいからです。
「胃がんがあったということは、がんができやすい胃であることは間違いない」
医師にそう言われています。医師からは、「毎年1回ずつ胃カメラを飲むこと」を言い渡されています。
日進月歩で向上する医療技術の進歩は、素晴らしい。でもその発展の恩恵に与って命を救うには、われわれの中にあるがんへの偏見をなくさなくてはなりません。
前述しましたが、もう「がん=死」ではありませんし、一部のがんを除いて、遺伝によって罹る病気ではないというのが主流の考え方だそうです。
がんの告知を冷静に受け止め、医師との綿密な相談のうえで治療にあたるべきです。抗がん剤治療をするか、しないかなどを決めるのは、あくまで患者自身です。
QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)を落としてでも延命するかという重大な問題を含んでいるからです。
ボクは本に、“ボクの場合”のがんとのつき合い方を書き尽くしました。いまがんに罹っている
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2005年5月10日 巨泉さん自身のサイトより
http://www.kyosen.com/mess |
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